じいさんの羽織

DANGO母です。


明日は夫が出かけるので、着るものを物色していた。
自分の着るものは妻が何とかする・・・と勘違いしているのでたちが悪い。
着るものにお金をかけないといざと言うときは本気で困る。
かといって、男の人で激しくお洒落さんも困り者であるが、どっちもどっちだな。


男性の洋服はほとんどがジャケットにパンツに靴で楽チン・・・と思い込んでいたら大間違い。
ジャケットは毎年のように襟の形や深さが変わるし、パンツも太さが違う。
靴の爪先も丸くなったり尖がったりどんどん変わってく。
何年も買っていないと、お店に行って浦島太郎のような気分になる。
女性の洋服はバラエティーに富んでいるので、少々流行遅れになっても
「私はこの服が好きなのよっ!」
で通りそうだが、男性用は形が決まっている分、そうもいかない。
今日の明日なので、買い揃える気持ちはさらさらない。


クローゼットの中をゴソゴソしていると、渋いたとう紙を発見した。
あけてみると、紋付の羽織が入っている。
おお、これは夫の死んだじいさんの羽織だ。
広げると、羽織紐まで付いている。
夏の絽の紋付と単衣の着物も一緒に入っている。
虫食いナシ・・・無傷である。
ブラボー。
娘に見せると、さっそく袖を通して、歌いながらピアノを弾いていた。
後姿はまるでフジコヘミングのようである。
これが、じいさんの古い洋服を見つけたのなら、こうはなるまい。
夫のじいさんの羽織をひ孫が何の抵抗もなくスルリと着る。
着物には不思議な力がある。
自然と歴史を感じるのである。
よそ者の私が生んだけど、娘はココの子なんだ。
連綿と続く血を感じながら、夫と娘を交互に眺める。


で、明日夫が着る服は全然決まっていないのである。